山田太一さん
先月、脚本家、山田太一さんが亡くなった。
「岸辺のアルバム」
「男たちの旅路」
「想い出作り」
「不揃いの林檎たち」
さっと言えるだけでも、これだけのドラマがある。
山田太一さんの、熱心なファンというのではないけれど、どのドラマも夢中で見た覚えがある。
「岸辺のアルバム」は、私が高校の頃のドラマ。主題歌のジャニスイアンの歌も大好きだった。
当時は、不倫、予期せぬ妊娠、家族の不和…を、こんな角度からドラマ化するのは、珍しかった。
刺激的な内容ということばかりではない。
こんな角度とは、出来事そのものより、何故こんなことになったのか、そして、それは、本当にいけないことなのか。
などを、見るものに考えさせるのである。
一方的に悪いとも良いとも言わない。
妙にドラマチックにしないし、どこかが、等身大なのだ。
どの作品をみても、みな、それぞれの日常の中で悩んだり苦しんでいる。
このままでいいのか。
何故、こんなふうになってしまうのか。
その苦しみは、どこからきているのか。
その人間がダメだって、誰が決めるの?
登場人物たちは、紆余曲折の末、自分の中に気づきを見いだしていく。
小さな変化ではあるけれど、昨日より少しだけ前進した明日を迎える。
すごく大雑把だけど、こんなドラマ展開が多い。
悩みは、一見、個人的なもののように思えるけれど、実は、その時々の取り巻く社会の影響を強く受けていたりする。
いつだって危うい社会、それに影響される私たち。
山田太一は、そんな私たちに寄り添って、作品を作り続けてきたのではないだろうか。
先日、NHKのクローズアップ現代で、是枝裕和監督が、ゲストで氏を語っているのを聞いてふとそう思ったのだ。
年老いてなお、温和な表情にみる眼光の鋭さは変わらなかった。たくさんの感謝を送りたいと思う。