先日のNHKスペシャルを見て、母を思い出しました。
先日、NHKスペシャル『認知症の母と脳科学者の私』を見ました。
認知症の母を介護していた頃を思い出し、胸に迫るものがありました。
脳科学者の恩蔵絢子さんが、7年に渡り、アルツハイマー型認知症のお母さんを介護されている様子が描かれていました。
いつか母は、母らしさを失っていってしまうのではないか?
母のことを、母の思いを、母の人生を、何ひとつわかっていないのではないか、という焦り。
自分の名前、生年月日を言えない母。
娘がいることを、娘の名前を、忘れていく母の現実。
それを、傍らで見るしか出来ない自分。
不安や絶望や、葛藤ばかりで過ぎていく毎日。
生活の中で、時折、目にする、元気だった頃の母の痕跡。
テレビでは、家族のために書いていた、お母さんの料理レシピが書いてある大学ノートが紹介される。
ページをめくり、絢子さんは、そこに、母を見た思いがして思わず涙してしまう。
やがて、絢子さんは、お母さんとの関わりの中で、お母さんは、昔と変わらず、今も懸命に生きていることに、改めて気がついていく。
そして、それが、母の母らしさに繋がることなんだと、実感し安心ていく様子は、私も手に取るようにわかります。
介護の時間は、お世話自体が大変な毎日ですが、私にとっては、母の人生をたどり、私の人生を、重ね合わせるような、かけがえのない時間でもありました。
ちょっとカッコつけて言うと、介護の後半は、母と私の間に、静かで優しいせせらぎが流れているような、そんな時間でした。
ですが、それも、長い間の不安や葛藤、自分に向き合う時間があったからこそ、たどり着いたような心境だったように思います。
映像にもありましたが、私の場合も『母は、最後まで私の母でした』。